ライフル射撃とは? ──こんな競技です。

target.jpg 「ライフル射撃」と聞いて、どの様なものを想像されるでしょ
うか?
 よく、「飛んで来るお皿を撃ち落とすやつじゃ無いの?」と
言われますが、そうではありません。お皿を撃つのはクレー
射撃と言って、ライフル射撃とは使用する銃もやっている人
間も異なる、全くの別モノです(自転車でいえば競輪とMTB、
ダンスでいえばバレエとヒップホップ位の違いでしょうか)。
甚だしくは、「猪を撃ちに行くの?」とか、「戦争ごっこの
事?」等と言われる事もありますが、その様なおっかないも
のでもありません。

ライフル射撃とは、簡潔に言い表わすと・・・

 競技用のライフル銃または拳銃(ピストル)で、固定された同心円の標的(→の
写真の様な物)の中心にある10点圏を狙い、規定の時間内に規定の弾数を撃
って、合計点を競う競技

・・・です。日本では銃刀法令により厳しい規制が設けられていることもあって、
あまり一般的ではありませんが、世界的には広く普及しており、オリンピックで
は陸上競技に次いで参加国が多い、重要な種目となっています。


 ──以下に、その概要を説明します。
 

使用する道具 ──銃とその他の装備品。


ライフル射撃には、普通の猟銃等よりも命中精度が高く、体に合わせてグリップ
や肩当て部分等の調整が可能な、競技専用の銃を使います。銃にはいくつか
の種類があり、銃の種類によって狙う標的の大きさ等が異なります。

ビームライフル&ビームピストル
 光センサーの仕掛けられた的を、銃口からストロボ光を放つ銃で撃つ、所謂
擬似射撃マシーンです。ガン×ムが装備している奴ではありません(笑)。我が
国の厳しい銃刀法令の下で、誰でも安全に、法令の制限を受けることなくスポ
ーツとして精度の高い射撃ができるようにと日本ライフル射撃協会が開発した
物です。警察で所持許可を貰う必要が無いので、大抵の人は空気銃や装薬銃
を持つ前にこれで練習する事になります。
 標的までの距離は10m。標的の10点圏の大きさは、ライフルが直径1mm
(近々、0.5mmに変更される模様です)、ピストルが直径11.5mmとなっています。

エアーライフル(10mライフル)&エアーピストル
 圧縮された空気を放出する力により直径4.5mmの鉛弾を発射する、所謂空気
銃です。BB弾の出る玩具の奴と原理的には殆ど同じなのですが、パワーも精
度も段違いなので、警察で所持許可を貰わなければ所持出来ません。
 標的までの距離は10m。標的の10点圏の大きさは、ライフルが直径0.5mm、
ピストルが直径11.5mmとなっています。

スモールボア・ライフル(50mライフル)
 火薬の力で直径5.56mm(22口径)の弾を発射する、所謂ホンモノの銃です。男
性用のスモールボア・フリーライフルと女性用のスモールボア・スポーツライフル
があり、スポーツライフルの方がフリーライフルに比べ軽く作られています。
 標的までの距離は50m。標的の10点圏の大きさは直径10.4mmとなっていま
す。

装具
equip.jpg 左の写真は、射撃に必要な装備品を全て身に着けた状態の
射手を撮ったものです。キャンバス(かなり厚手の布)or皮革製の
ジャケット(コート)とズボンを着用し、左手には射撃用グローブ(ミ
トン)をはめています。履いている靴も射撃用のシューズです。
 何のためにこれだけの装備を身に着けるのかというと、体をギ
ブスの様に束縛・固定することにより、銃を安定させる為です。
ライフル射撃では標的が動かないので、標的を狙う銃も動かな
いほうが理想的です。しかし、普通の服を着た状態で銃を構える
と、銃はぐらぐらと揺れ動いてしまいます。少しでも銃を安定させ
る為、射手はこのような装具を身に着けるのです。
 なお、よく勘違いされるのですが、これらの用具には「防弾チョ
ッキ」としての機能はありません。射撃に携わる人間は何よりも
安全管理を重視するので、弾丸が射手に向かって飛んでくる可
能性は、街中でツキノワグマに襲われる可能性よりも低いといえ
るでしょう。
 あと、これらのごつい装備を身に付けるのはライフル種目の選手のみです。ピ
ストル種目ではルール上、体を固定するような服を着る事が出来なくなっていま
す。

射撃姿勢 ──こんな姿勢で撃ちます。

Style.jpg←手前より、伏射(Prone)・膝射
(Kneeling)・立射(Standing)・ピストル。
 ライフル射撃では、姿勢が低くなるほ
ど銃が安定して、命中率が高くなりま
す。その為、立射よりも膝射、膝射より
も伏射の方が得点が高くなる傾向が
あります。極端な話、高い姿勢では、
「いかに当てるか」が勝負となり、低い
姿勢では、「いかに外さないか」が勝
負となる訳です。

 ライフル種目ではこの他に両ひじを
テーブルについて撃つ肘射(Table)等がありますが、ピストル種目の姿勢は立位
での片手撃ちのみです。

種目紹介 ──いろいろあります。

 新聞のスポーツ欄に時たま掲載されている、射撃の大会成績の記事を見る
と、"SFRP60"だの"ARLS40"だのといった、競技関係者以外には意味不明な
アルファベットと数字の羅列が記載されています。これらの文字列は種目の略
称であり、アルファベットは射撃姿勢や性別等を、数字は発射弾数等を表して
います。
 ここでは、国内で行われている主要な種目について、その呼称の意味と競技
の内容を説明したいと思います。

 ・・・なお、国際射撃連盟のルール改定に伴い、2002年から大半の種目で呼
称の変更がなされたのですが、旧呼称が使われているケースもまだ多い様な
ので、新旧両方の呼称を記載しておきます。
呼称
競技内容
50m3×40M(50mRifle 3×40shots Men's)
旧 SFR3P120(Smallbare Free Rifle 3Pose 120shots)
 スモールボア・フリーライフル(=50mライフル)を使用し、3時間の
制限時間内に伏射→立射→膝射の順に3つの姿勢を各40発ずつ撃ち、計
120発・1200点満点で得点を競います。この種目はライフルのマラソ
ン競技と称され、極度に精神を集中し体力も消耗される為に、競技終了
後は体重が2kgは減ると言われています。その為、これを制する者は、
ライフルのチャンピオンとして高く評価されます。
50m3×20W(50mRifle 3×20shots Women's)
旧 SSR3P120(Smallbare Sports Rifle 3Pose 60shots)
 50m3×40Mの女性版です。女性用のスモールボア・スポーツライ
フルを使用し、2時間15分の制限時間内に伏射→立射→膝射の順に3つ
の姿勢を各20発ずつ撃ち、計60発・600点満点で得点を競います。
50mP60M(50mRifle Prone 60shots Men's) 
旧 SFRP60(Smallbare Free Rifle Prone 60shots)
50mP60W(50mRifle Prone 60shots Women's)
旧 SSRP60(Smallbare Sports Rifle Prone 60shots)
 通称イングリッシュ・マッチ(←日本国内でこう呼んでいる人は殆ど
いませんが・・・)。スモールボアライフルを使用して、1時間15分の
制限時間内に伏射のみで60発射撃し、600点満点で得点を競います。
10mS60M(10mRifle Standing 60shots Men's)
旧 ARMS60(Air Rifle Men's Standing 60shots)
 エアーライフル(=10mライフル)を使用して、立射の姿勢で1時間
45分の制限時間内に60発射撃し、600点満点で得点を競います。
10mS40W(10mRifle Standing 40shots Women's)
旧 ARLS40(Air Rifle Ladies Standing 40shots)
 ↑の女性版。エアーライフルを使用して、立射の姿勢で1時間15分の
制限時間内に40発射撃し、400点満点で得点を競います。
10mP60M(10mRifle Prone 60shots Men's)
旧 ARMP60(Air Rifle Men's Prone 60shots)
 エアーライフルを使用して、伏射の姿勢で1時間30分の制限時間内に
60発射撃し、600点満点で得点を競います。伏射は最も命中率の高い
姿勢である上、エアーライフルはスモールボアライフルに較べ標的の10
点圏が大きいので、全国クラスの大会では、複数の選手が満点の600点
を出す事もあります。
AP60M(Air Pistol 60shots Men's)
旧 APM60(Air Pistol Men's 60shots)
 エアーピストル(=10mピストル)を使用して、1時間30分の制
時間内に60発射撃し、600点満点で得点を競います。
BRLS40(Beam Rifle Ladies Standing 40shots)  ビームライフルを使用して、立射の姿勢で45分の制限時間内に40発
射撃し、400点満点で得点を競います。
 ビーム種目は日本のみのものなので、国際ルールの改正による呼称の
変更は無く、旧来の呼称のままとなっています。
BRLT60(Beam Rifle Ladies Table 60shots)  ビームライフルを使用して、肘射の姿勢で50分の制限時間内に60発
射撃し、600点満点で得点を競います。10mP60M同様、全国クラス
の大会では、満点に近い点数が優勝ラインとなっています。
BP40(Beam Pistol 40shots)  ビームピストルを使用して、45分の制限時間内に40発射撃し、400
点満点で得点を競います。
10mS60MJ(10mRifle Standing 60shots Men'
sJunior)
旧 ARJMS60(Air Rifle Junior Men's Standing 60shots)
10mS40WJ(10mRifle Standing 40shots Women's
Junior)
旧 ARJLS60(Air Rifle Junior Ladies Standing 40shots)
 10mS60M及び10mS40Mと、制限時間等のルールは全く同じです。
"Junior"は国際的には21歳未満を指すようですが、日本では主に高校
生を指します。

ライフル射撃を始めるには? ──興味を持たれた方へ。

 富山県内の方であれば、まずは県ライフル射撃協会主催のビームライフル練
習会に参加される事をお薦めします。県総合体育センター(富山空港隣)内のビ
ームライフル場で、月1回程度のペースで行われています。